悪性腫瘍
先月は良性腫瘍についてお話ししましたので、今月は悪性腫瘍についてお話をしていこうと思います。悪性腫瘍といっても種類が多いので、よく見られる腫瘍を抜粋してお伝えしていきます。
リンパ腫
白血球の一種(リンパ球)ががん化する血液の悪性腫瘍です。犬・猫ともに非常に多く見られ、進行が早いため早期発見と治療が重要になります。
犬:全身のリンパ節が腫れるタイプが多く、顎の下、脇の下、内股、膝の裏などにコリコリと触れるしこりができます
猫:全身のあらゆる部位に発生しますが、特に以下のタイプが多く見られます。
消化器型(腸管型など):お腹のリンパや腸に発生。慢性的な嘔吐、下痢、体重減少がみられる
前縦隔型:心臓や肺のリンパ組織に発生。呼吸困難や食欲不振がみられる
鼻腔内型:鼻の中に発生し、くしゃみや鼻水、鼻血、顔の腫れなどがみられる
要因としては、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV、猫エイズ)の感染があげられます。ウイルス反応が陽性の場合、陰性の猫に比べて発症リスクが非常に高くなります。また、高齢な猫での発症も多く見られます。
症状:元気・食欲低下、発熱、体重減少
診断:針でしこりの細胞を吸い取って調べる細胞診や血液検査、画像検査などで総合的に判断します
治療:抗がん剤治療や、外科手術(腫瘍で腸閉塞を起こしているなど、部分的な摘出が必要な場合)ステロイド治療を行います
◎リンパ腫は、全身性の腫瘍(血液の腫瘍)であるため、現時点で完治は非常に難しい病気です。治療の目的は、腫瘍を小さくして症状を抑え、痛みや苦痛のない時間(QOL)を少しでも長く維持することにあります。
肥満細胞腫
犬・猫:皮膚悪性腫瘍の中で最も多い腫瘍です。肥満に関連する病気ではなく、免疫を担う細胞ががん化したもので、進行すると全身に転移する恐れがありますが、悪性度の段階(グレード)に応じた早期の外科手術や治療により根治も期待できます。
特徴:イボ状、脂肪の塊、赤くただれる、脱毛など。大きくなったり、小さくなったりする
グレードごとの治療
グレード1(低悪性度)転移の可能性が低く、完全な外科手術で高い根治率が期待できます
グレード2(中悪性度)外科切除が基本ですが、状況に応じて放射線治療や化学療法が併用されます
グレード3(高悪性度)進行が早く内臓へ転移しやすいため、全身的な抗がん剤治療が必要になります
◎皮膚病と見分けがつきにくいため、シャンプーやブラッシングの際など、普段から体を触り小さな「しこり」を見逃さないことが早期発見につながります
骨肉腫
犬:骨に発生する非常に悪性度の高いがんで、中〜大型犬の足の骨によくみられます。強い痛みを伴い、短期間で肺などに転移しやすいため、痛みの緩和とQOL(生活の質)の維持を最優先に、早期の外科手術(断脚)と化学療法(抗がん剤)を組み合わせた治療が一般的です。
好発犬種:ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、グレート・デンなどの大型犬
好発部位:四肢(特に前足の肘周辺、後ろ足の膝周辺)に多く発生
初期症状:足を引きずる(破行)、足の腫れ、関節の熱感
- レントゲン検査: 骨の表面が不整に盛り上がったり、虫食い状に骨が溶ける特徴的なサインを確認するためにまず最初に行います
- 病理検査(生検): 組織を採取して確定診断を行います
- 全身検査: 早期に肺や他の骨へ転移しやすいため、胸部レントゲン、CT検査、超音波検査を行います
- 疼痛管理
手術が難しい場合や痛みの緩和を最優先する場合、強力な痛み止めの貼り薬などで緩和ケアを行います
